壁タイルの施工要項
材質について
タイルには磁器質(Ⅰ類)・せっ器質(Ⅱ類)・陶器質(Ⅲ類)の材質があります。材質によっては水がかりする場所での使用に向かないなど、使用条件が変わります。使用場所や目的に応じた材質の選択が重要です。
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■ 磁器質(Ⅰ類)
1230℃以上で焼成され、緻密で強度のある材質です。吸水性がほとんど無いため水に濡れる場所での使用にも適しています。(吸水率:3.0% 以下) -
■ せっ器質(Ⅱ類)
磁器質に比べると若干の吸水性があるため、プールや浴槽、屋外床面での使用にはやや適していません。磁器質に比べ暖かみのあるやわらかい発色が特長です。(吸水率:10.0% 以下) -
■ 陶器質(Ⅲ類)
吸水性が高いため屋外での使用は適さない場合が多いですが、低温焼成のため鮮やかな発色を作れるのが特徴です。(吸水率:50.0% 以下)
ユニット式・シート式について
壁用タイルには小さなタイルを並べて固定したシート状(ユニット)のものがあります。ユニットまたはシートタイプといいます。このユニット化により広い面積も手早く張ることができ、施工が効率よく素早く進みます。
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■ オモテ紙張りユニット
タイルのおもて面に、水で剥がせる糊で紙を張り付けてユニット化しています。紙の部分をカットすれば、タイルを簡単に切り離すことができます。 シートを施工面に張りつけてから紙を剥がすため、タイルだけを手早く均一に張り付けることができ、接着剤硬化前にはタイルの位置を微調整することもできるユニットです。 水で紙をしっかりと湿らせてから3分ほど置いてから紙を剥がしてください。紙を剥がした後、しっかり糊を拭き取るのがきれいに施工するポイントです。 -
■ 裏ネット張りユニット
タイルの裏面にネットを張り付けてユニット化しています。 タイルの裏面にネットが張り付いています。ネットごと張りつけるため、手順が少なく簡単に施工を行うことが出来ます。 ネット部分をカッターなどで切り離すことができます。目地を入れずに仕上げる時は、ネットの色と接着剤の色をなるべく同じになるようあらかじめご確認ください。
施工場所と推奨施工法
300角未満 | 300角以上 | 600x300mm以上 | 備考 | |
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内装壁 | 【下地】 ボード・モルタル 【施工法】 接着剤張り |
【下地】 ボード・モルタル・コンクリート 等 【施工法】 接着剤貼り(*1)( *2) |
【下地】 ボード・モルタル・コンクリート等 【施工法】 接着剤張り(*1) (*2) |
*1 弾性接着剤を使用してください。 *2 3m以上の高さに施工する場合、建物の構造や下地条件により施工法が異なります。必ず施工業者にご相談ください。 |
外装壁 | 【下地】 モルタル・コンクリート 【施工法】 接着張り・圧着張り 等 |
【下地】 モルタル・コンクリート 等 【施工法】 接着張り(*3)(*4) |
【下地】 モルタル・コンクリート 等 【施工法】 接着張り(*3)(*4) |
*3 弾性接着剤を使用してください。 *4 建物の構造や下地条件により施工法が異なります。必ず施工業者にご相談ください。 |
内装床 | 【下地】 モルタル 【施工法】 接着剤張り・圧着張り セメントペースト張り(*5) 【下地】 ボード 【施工法】 接着剤張り |
【下地】 モルタル 【施工法】 接着剤張り・圧着張り 【下地】 ボード 【施工法】 接着剤張り |
【下地】 モルタル 【施工法】 接着剤張り・改良圧着張り 【下地】 ボード 【施工法】 接着剤張り |
*5 小面積への施工 床タイル施工の注意点 |
外装床 | 【下地】 モルタル 【施工法】 接着剤張り・圧着張り セメントペースト張り(*6) |
【下地】 モルタル 【施工法】 接着剤張り・圧着張り |
【下地】 モルタル 【施工法】 接着剤張り・改良圧着張り |
*6 小面積への施工 床タイル施工の注意点 |
屋内壁 適応下地ボード目安
タイルの厚さ | 下地ボード |
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15mm以下 | せっこうボード 9.5mm厚以上 けい酸カルシウム板 比重1.0 6.0mm厚以上 合板 1類以上 9.5mm厚以上 デラクリートセメントボード |
15mmを超える | けい酸カルシウム板 比重1.0 6.0mm厚以上 合板 1類以上 9.5mm厚以上 デラクリートセメントボード |
■ 屋内壁 全面接着張り
タイル・レンガ・石材用の弾性接着剤を使用した場合です。適用下地に、内外装タイル張り用弾性接着剤で適用タイルを張付けます。下地メーカーの施工マニュアルをご確認の上、適切な納まりおよび防水・防火処置を実施してください。 また、詳細についてはJASS26 内装工事 JASS11 木工工事を参照し、必要に応じて下地補強を実施してください。
※屋外壁の推奨下地は専門業者の方にお尋ねください。
壁施工
張付材料に、既成調合セメントモルタルやポリマー配合セメントモルタルなどを使用します。JASS19 セラミックタイル張り工事標準仕様書の下地・タイル形状区分により、適用工法を選択してください。また、伸縮調整目地の位置を適切に設置し、タイルがまたがらないよう割付に注意します。
内装壁・接着剤張り
適用下地はモルタル、コンクリート、EPC、ALCパネル、ボード類とします。 接着剤は開封後直ちに使用してください。 接着剤をクシ目ごてを用いて必要な量および高さになるように塗布します。 接着剤の一回当たりの塗布面積は、接着剤の張付け可能時間内に張り終える面積としてください。 下地表面が濡れている場合は、乾燥させた後、接着剤を塗布してください。 サッシなどの部材を汚さないように事前に養生テープなどで養生してください。 吸水調整材やシーラーなどを塗布すると、本来の接着性を発現しない場合がありますのでご注意ください。 接着剤の厚みが厚くなると、接着剤の硬化が遅くなり剥離の原因となる危険性があります。
接着剤カテゴリー
内装壁・改良圧着張り
圧着張りの張付けモルタルがオープンタイムの影響を受けやすく接着不良につながる点を改良した工法です。 張付けモルタルを下地面に塗り、さらにタイル裏面全体にも張付けモルタルを塗付けながら壁面に押し付けて張ります。 下地側に張付けモルタルを塗った直後にタイル張りをすると、タイルにズレが生じる場合がありますので、ある程度締まった後にタイルを張付けることが重要です。 タイルの裏面に張付けモルタルを塗付け、タイルを直ちに張付ける作業手順とします。
下地について
下地モルタル作製は、コンクリート打設後、養生4 週間以上を目安としてください。コンクリートとモルタルの収縮率変化で、剥離の危険性が大きくなります。 同様に、下地モルタル作成後も、タイル張りまでは養生4 週間以上を目安としてください。 品質基準に適合した吸水調整材を塗布し、セメント系下地調整厚塗材2種( CM-2) で不陸および下地の調整を実施してください。押出成型セメント板は、リブ付き 専用パネルを使用しパネル素地面への直張りとしてください。ALCパネルへの張付けは、30 ㎏ / ㎡(張付けモルタルを含む総重量)以下を目安としてください。
伸縮調整目地について
コンクリートやモルタル下地の乾燥収縮や湿潤膨張による動き、また、タイルやモルタル等の熱膨張による動きを吸収し、タイルのひび割れ剥離を緩和するため、所定の位置に適切な伸縮調整目地を設置してください。タイル種類に関係なく、幅は10 ㎜以上としてください。
タイル目地について
突き付け目地(ねむり目地)や深目地はしないでください。コンクリートの収縮、タイルの熱膨張による動きが吸収できず、タイルの欠け、ひび割れ、剥離の原因に なります。目地詰めは、目地材の種類、タイル面状により、タイル表面に付着した目地材除去が困難になる場合があります。予め目立たない箇所で試してください。 なお、黒、特濃灰色は目地残りが目立つ傾向にありますのでご注意ください。表紙張りユニット品は、紙糊が残ったまま目地詰めすると、通常の洗い作業で除去でき ない場合があります。
コンクリート直張りについて
工期短縮、省力化などを目的とし、コンクリート面に直接タイル張りを行う「直張り工法」が増加しています。躯体精度がタイル仕上り品質に直結するため、型枠計 画時から躯体精度の確保を実施してください。また、タイル施工前に下地精度を確認し、合わせて剥離防止の下地処理を実施してください。型枠精度± 3 ㎜、下地 面精度7 ㎜ /3m を目標とし、不陸が確認された場合は補修を実施してください。剥離防止は、目荒し(超高圧水洗浄法、MCR工法)を実施し、張付材はポリマー セメントモルタルを使用してください。