乱形石施工マニュアル
天然石を大ぶりに割った乱形石は自然な美しさを楽しめる石材です。大きさやカタチがランダムなので、出来上がりの雰囲気はナチュラルな仕上がりになります。DIYで挑戦する方も多い石材です。施工要項と注意点をご確認ください。
表1.乱形の施工部位、下地と推奨施工法の関係
部位 | 下地 | 推奨施工法 |
---|---|---|
床 | コンクリート | 1. セメントペースト張り |
内壁 | ボード | 2. 点付け施工 |
モルタル | 2. 点付け施工 3. 改良積上げ張り(高さ1.2m以下) |
|
外壁(高さ1.2m以下) | モルタル | 3. 改良積上げ張り |
- 1.セメントペースト張り
- 1-1.施工概要
床のコンクリート下地に固練りのバサバサモルタルを敷き、乱形を仮置きして叩きこみながら面調整した後、
セメントペーストを用いて張り付ける工法です。
- 1-2.適用条件
表2セメントペースト張りの適用条件
下地 屋内外床のコンクリート下地で、歩行床のみ適用されます。 貼付材 敷きモルタルとセメントペーストを使用します。
白系の石材を施工する場合は、白セメントを用いてください。
セメント 砂 水セメント比 敷きモルタル 1 3~5 W/C=15% セメントペースト 1 0 W/C=50%
目地 目地幅は、6mm以上を標準とします。
目地幅が15mmを超える場合は、現場調合目地(C:S=1:2)を使用してください。
- 1-3.施工手順
(1)下地面チェック
コンクリート面を十分に清掃し、ホコリ、レイタンス、異物などを除去します。
(2)石組みバランス(仮並べ)
施工に先立ち、石組みバランスを仮並べによって確認します。
施工のポイント - 片隅の方から並べ、大きな石は極力中央に配置し、その周りを中小の石で埋めていく並べ方がバランスよく、美しい仕上がりになります。
- バランスが悪かったり、目地幅が極端に異なる場合などでは、石材を割って使用したり、エッジ部分を加工して使用してください。
- 目地が十字にならないようにすることが仕上がりを美しくするポイントです。
-
(3)モルタル敷き
下地面に散水した後、バサバサモルタルを敷きます。
モルタルの敷設は30分で張り終える程度とします。
(4)仮据え置き
ゴムトン等を用いながら、十分な叩き込みにより面調整します。
厚みのバラツキが大きいので、バサバサモルタルの量を調節する必要があります。
(5)セメントペースト塗布
仮置きした乱形を一旦外し、下地側にセメントペーストをまんべんなく塗布します。
セメントペーストの水分を多めにすると、接着不良の原因となります。
(6)乱形 張り付け
セメントペースト塗布後、直ちに乱形を張り付けます。
ゴムトン等を用いて十分な叩き込みにより、面及び一の調整を行います。
(7)目地詰め
アーストン張り付け後、1日経過した後、ゴムコテを用いて目地を塗り込みます。塗り目地後は
直ちにスポンジで拭き取ります。
施工のポイント - 表面に付いた目地は直ちに濡れたスポンジで拭き取ってください。
- 酸洗いは行わないでください。「酸焼け」「サビ」を発生させる可能性があります。
- 目地詰めをしっかり行ってください。目地切れ、白華等の発生予防になります。
(8)清掃・養生
清掃後、必要に応じて養生を行ってください。
- 2.点付け施工
- 2-1 施工概要
乱形の裏面に石材用のエポキシ系接着剤を点状に盛り付け、面調調整をしながら施工していく工法です。
面外への倒れ防止のために、乱形の上部及び側面は速硬性セメントまたは速硬性エポキシ系接着剤を用いて仮固定します。
高さ3m未満の内壁に適用します。
- 2-2.適用条件
適用条件の概要を表3に示します。
下地 下記の内壁のみ適用されます。
(1)コンクリート+モルタル下地(±1.5mm/2m以内の精度)
(2)ケイ酸カルシウム板下地
(3)合板下地(乾燥部位限定)
(4)デラクリートセメントボード張り付け材 石材用のエポキシ系接着剤を使用します。
補助接着剤としては、速硬性エポキシ系接着剤、「(株)コニシ クイックメンダー」、もしくは速硬性セメント、ジェットセメント(RC下地の場合)の使用を推奨します。目地 目地幅は6mm以上を標準とします。
目地幅が15mmを超える場合は、現場調合目地(C:S=1:2)を使用してください。施工高さ 3m未満
- 2-3. 施工手順
(1)施工面のチェック
適用可能な下地であるかを確認してください。
下地面を清掃し、ほこり、汚れなどを除去します。
(2)仕上げ糸の引き通し
割付け図に従って、仕上げ糸を引き通します。
(3)最下段の定木セット
ズレ防止のために、割付けに合わせて定木を留め付けます。
(4)接着剤の盛り付け
乱形の裏側に接着剤を乗せます。目安としては300角程度の大きさの場合でも5点程度の点付けを行い、張り付け後の接着面積が
50%以上になるようにします。
施工のポイント ・接着剤の混練不良がある場合は、使用条件によってシミが発生する場合があります。十分に混錬してください。
・あらかじめ、アーストン裏面に石材用シーラーを塗布し、乾燥させた後に施工する方法をお勧めいたします。
注意 ・エポキシ樹脂接着剤が皮膚に触れると、「かぶれる」ことがあります。保護手袋などを着用して作業してください。
・換気のよい場所で作業してください。
・火気に近づけないでください。
(5)乱形の張り付け
仕上げ糸に合わせながら乱形石を張り付けます。
(6)仮固定用接着剤の塗布
上部と側面に仮固定用接着剤を塗布します。
(7)目地詰め
張り付け後、1日以上経過し、接着剤が硬化していることを確認した後、ゴムコテを用いて目地を塗り込みます。塗り目地は、直ちにスポンジで拭き取ります。
施工のポイント ・表面に付いた目地は直ちにスポンジで拭き取ってください。
・酸洗いは行わないでください。「酸焼け」「サビ」を発生させる可能性があります。
・目地詰めをしっかり行ってください。目地切れ、白華等の発生予防になります。
(8)清掃・養生
清掃後、必要に応じて養生を行ってください。
- 3.改良積上げ張り
- 3-1 施工概要
精度よいモルタル下地を作製し、乱形の裏に張り付けモルタルを塗り、積み上げながら
施工していきます。厚みが不揃いな商品を張り付ける場合は面段差が生じますので予めご承知ください。
高さ1.2m以下の内外壁に適用します。
- 3-2 適用条件
表4 改良積上げ張りの適用条件
下地 内外壁の下記の下地に適用されます。
(1)コンクリート+モルタル下地(±2.0mm/2m以内の精度)
(2)ブリック+モルタル下地張り付け材 ポリマーセメントモルタルを使用します。
但し、酸に弱い石種で、腰高(1.2m)以下、(1)コンクリート+モルタル下地の条件に限りプレーンモルタルも可能とします。目地 目地幅は6mm以上を標準とします。
目地幅が15mmを超える場合は、現場調合目地(C:S=1:2)を使用してください。施工高さ 腰高(1.2mを目安)程度とします。
- 3-3 施工手順
(1) 下地面のチェック
適用可能な下地であるかを確認してください。
下地面を清掃し、ほこり、汚れなどを除去します。
(2) 仮並べ
施工に先立ち、石組みバランスを仮並べによって確認します。
施工のポイント ・角隅の方から並べ、大きな石は極力中央に配置し、その周りを中小の石で埋めていく並べ方がバランスよく、美しい仕上がりになります。
・バランスが悪かったり、目地幅が極端に異なる場合などでは、石材を割って使用したり、エッジ部分を加工して使用してください。
・目地通りが十字にならないようにすることが仕上がりを美しくするポイントです。
(3) 張り付けモルタルの混練
セメント混和用ポリマーを混和したポリマーセメントモルタルとし、柔らかく練り上げます。既調合モルタルでは、イナメントタフIIとタイルポリマーSB-102の組み合わせをお奨めします。現場調合の場合は表5に示す調合とします。
モルタルの軟度は、下地の水の引き具合や作業性を考慮して調整します。また、一旦練り混ぜたモルタルは、2時間を経過して使用しないでください。
- 3-2 適用条件
(4)張り付け
乱形の裏面に10~20mmの厚さの張り付けモルタルを塗り、下段から張り上げていきます。施工のポイント ・裏面に空隙ができないようしっかりと揉みこんでください。
・空隙ができると、白華やシミの原因になります。石材裏面に空隙ができないよう、石材の裏面全体にモルタルを塗付けてください。
・はみ出したモルタルが仕上げ面に付着した場合、直ちに濡れたスポンジを用いて拭き取ってください。
(5)目地詰め
張り付け後1日経過した後、ゴムコテを用いて現場調合目地を詰めます。施工のポイント ・裏面に付いた目地は直ちに濡れたスポンジで拭き取ってください。
・酸洗いは行わないでください。「酸焼け」「サビ」を発生させる可能性があります。
・目地詰めをしっかり行ってください。目地切れ、白華等の発生予防になります。
(6)清掃・養生
清掃後、必要に応じて養生を行ってください。
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